思い切り擬似恋愛を楽しもう

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思い切り擬似恋愛を楽しもうブログ:03-4-18


5歳になる男の子はほぼ毎ばん、
手縫いの甚平に袖を通す…
着古した甚平は男の子のお気に入りの一つだ。

2年前にあたしが作ったその甚平はもう裾口が擦り切れ、
濃紺だった「井」の字の文様はすっかり色褪せている。

素人の作品なので、
背中の正中線のつなぎ目の模様がかみ合っていない上に
縫い目の間隔もたどたどしいが…

今もあたしの横で、
古びた着心地の良さに包まれて遊ぶ男の子は、
昭和の香り漂う「バカボン」のようであり微笑ましい。

しかしこの質素な服には、
あたしと夫の特別な想いが染み込んでいる。

当時、3歳前の男の子の小さな身体に、
点滴や輸血など様々な処置が施されることになり、
あたしと夫は呆然とそのことを受け入れた。

受け入れることのほかに、
父母であるあたしたちに
出来ることがあまりにも無かったからだ。

血液型が違うので
血を分けてあげられる訳でもなく、
辛い服薬と同じ苦しみを共に味わえるでもなく、
医療処置を自ら行ってあげられる訳でもない…

父母なのに何もしてあげられない…

病院での1日1日は異様に長く感じられる。
不慣れな付き添いの取り敢えずの時間潰しに型紙と布を買い、
裁縫箱を病室に持ち込んで甚平を縫うことにした。

病院が貸し出す寝間着を着せると、
病院や病気に男の子を取られてしまうような気がして、
13時も夕方も出来るだけ家の衣類を着せてはいたが、
それだけではなにか足りないという気がしていたのかも知れない。

得体の知れない衝動で、
眠れない夕方には病室での作業に黙々と没頭した。

そうして、
あたしの荒れた手のひらに
縫い針の刺し傷が目立つようになった頃に、
ようやくそれは完成した。

仕上がっていく様子を
日々見ていた男の子はたいそう喜んでくれた。
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